旅行2日目。屈斜路湖〜野付半島〜知床峠とめぐってウトロ着。今日はけっこう疲れたが、それでも何とか第5話まで進んだ。昨日独断と偏見で述べた、「平凡な市井の人々の人生における有為転変を淡々と綴った短編集」という感想はまったく変わらない。
ここには今までいちおうハッピー・エンディングと言える物語が二つあって、ひとつは最初ぴんとこなかった第1話。あれは今考えると、突発的な事件に巻きこまれながらも強運に恵まれ、窮地を脱することがあるという人生の不思議がテーマかもしれない。二つ目は今日読んだ第4話で、こちらは裁判所の判事がある事件を、論理というより知恵を発揮して「解決」に導くもの。そのしたたかな計算に生の源である活力が感じられ、全体的にもコミカルでトボケた味があって面白い。二つとも、極論すれば「生の讃歌」と言えるだろうか。
一方、次に読んだ表題作の "In Other Rooms, Other Wonders" は、主人公が「幸福な人生を送りかけたところへ、それを一気に暗転させる事態が発生する」という、これで3つ目のパターン。前の2編と同じく、「つかのまの幸福、はかない人生の悲哀」をしみじみと感じさせるものだ。
なお、今日の話でも、ラホールの地主にかかわる人物が交代で主人公となっている。最初からふりかえると、そのほとんどは使用人ばかり。つまり、「平凡な市井の人々の人生における有為転変」が一貫して描かれているわけで、よかれあしかれ、そういう人生の不思議が本書のテーマなのかもしれない。