ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Color of Lightning”雑感(1)

 旅行最終日。昨晩に続いて小樽市内を歩いてまわった。といっても、大林宣彦監督の映画「はるか、ノスタルジィ」のロケ地を探訪するのが主目的で、映画に出てきた丘の上から小樽港を眺めたときは、あ、この景色だ!といたく感激した。
 …などとお茶を濁しているわけは、本来なら昨日読みおえた "In Other Rooms, Other Wonders" のレビューを書くべきところ、夜更けに帰宅してやっとパソコンに向かったばかりなので時間がない。そこで今日は、千歳からの機内で読みはじめた Paulette Jiles の "The Color of Lightning" について最初の感想を書いておこう。昨年のギラー賞(Scotiabank Giller Prize)候補作の中で、何かの記事によれば、一般読者のあいだではいちばん評判がよかったという作品である。
 まだほんの少ししか読んでいないので文字どおり雑感に過ぎないが、ぼくは第2章に入ってから俄然、目が離せなくなった! 文学的な深みはさほどでもないがストーリー性は抜群、クイクイ読めるタイプの小説のような気がする。
 舞台はアメリカのテキサス州、時代は南北戦争の末期。ケンタッキー州から解放奴隷の一団がテキサスの大平原に移住して新生活をはじめる、というのが第1章で、第2章になると、そこへコマンチ族が襲いかかる。そのリアルな描写のすさまじいこと! 西部劇では白人とインディアンの激突はおなじみのシーンのひとつだが、本書を読むと、映画はまあキレイごとに過ぎないことがよくわかる。虐殺、レイプ…ちょっと言葉にはしにくい。
 第3章では一転、大まかな時代背景の説明が始まる。へえ、と思ったのは、メソジスト派バプティスト派などキリスト教の宗派がそれぞれ専属で、スー族やアパッチ族などインディアンの各部族との融和、その改宗に当たっていたこと。たぶん史実なんだろう。で、問題のコマンチ族を担当したのがクェーカー教徒、というくだりまで読んだところで羽田に到着。あとはバスの中でひとまず、ケータイを使ってこの駄文を書いていた。これはかなりイケそうだ!