ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Andrea Levy の “The Long Song”(2)

 直感で予想すると、これはショートリストどまり。受賞はないと思う。William Hill のオッズは 10 / 1 で、ぼくが「泡沫候補」と呼んだ Rose Tremain の "Trespass" と同じく7位グループに属しているが、あちらよりはブッカー賞にふさわしい内容だ。しかしながら、たとえば去年の最終候補作と較べると、いちばんつまらなかった Adam Foulds の "The Quickening Maze" よりは上だけど、でも下位グループかな。(何だかアホなことばかり書いているが、ブッカー賞なんてお祭りみたいなものだから、東洋の島国で一人くらい騒いでいてもいいだろう、と居直っている)。
 直感はべつにして予想の根拠を述べると、「悲惨な歴史をコメディー・タッチで綴った点に本書の価値があ」り、「語り口の妙によって本書は佳作たりえている」が、「内容的にはさほど新味がない」という点に尽きる。前者の「スラップスティック調の悲喜劇」的な要素をどこまで評価するかによってショートリストの当落が決まるのではないか。ぼくはこういうコミカルなほら話が大好きなので、何とか残ってほしいんだけど。
 ともあれ、これで今年のブッカー賞候補作を読むのは3冊目。今までの順位をつけると、1."The Slap 2."The Long Song" 3."Trespass" となる。"The Slap" は Hill のオッズでも1番人気だし、今調べたらアマゾンUKのフィクション部門ベストセラー9位。さらに売れているのが Emma Donoghue の "Room" だがまだ届いていない。