ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Finkler Question”雑感(1)

 7月末に注文した Damon Galgut の "In a Strange Room" がまだ届かない。仕方なく、今年のブッカー賞最終候補作でいちばん人気薄らしい Howard Jacobson の "The Finkler Question" に取りかかった。
 第一印象を述べると、あまり期待していなかったせいか意外にいいな、と思える部分がある。いかにもイギリスの小説らしく、主要な人物の性格や心理がじっくり練りあげられ、それぞれの心理が絡みあうちに主筋が悠々と流れる。傍流と思われるようなエピソードもしばしば織りまぜられ、物語に厚みをもたらしている。
 ただ、例によって早々に結論を下すようだが、これも受賞は厳しいんじゃないかな。理由は簡単で、どうもこの先、知的興奮をかきたてるような深みのある内容が待っているとは思えないのだ。
 主な人物は3人いて、いちばん登場回数が多いのは、ブラピと間違えられることもある中年のイケメン。この独身男がそれぞれ妻を亡くしたばかりの二人の旧友と会い、旧交を温めた夜の帰り道、追いはぎに襲われる。ところが、その犯人がなんと女で、どうも男の正体を知っていたフシがある。もしくは、旧友の一人がテレビで売れっ子のユダヤ人哲学者ということで、自分はそのユダヤ人と勘違いされたのかも、と男は首をひねっている。
 男は少年時代、ある占い師に恋が身の破滅を招くと予言されたことがある。この冒頭のエピソードがどうやら、女性遍歴こそ多いものの結婚歴のない男の人生に影を落としているようで、今後の展開としては、くだんの強盗事件がその予言と結びつくのかもしれない…。今日はざっとそんなところまで読み進んだのだが、でもこれ、何だかどうでもいいような話としか思えないんですけどね。ま、予想外に面白くなることを期待しましょう。