ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Damon Galgut の “In a Strange Room”(2)

 今はどうか知らないが、少し前だと雑感(1)にも書いたとおり、日本のアマゾンではなぜかどの版も入手が遅れそうだったので急遽、アマゾンUKからわざわざハードカバーを取り寄せた。おかげで大枚をはたいてしまい、月末にかみさんから大目玉をくいそうだが、読後の今はとても満足している。これはほんとうにいい作品だ!
 William Hill のオッズを調べると相変わらず3番人気だが、ぼくの評価では、本命と思われる Tom McCarthy の "C" に次いで第2位の出来ばえである。それどころか、結末でぐっと胸に迫るものがあった点を考えると、こちらのほうを本命に推したい誘惑にも駆られてしまう。なにしろ、このブログをわりとまめにチェックしているという友人によると、ぼくの趣味はおセンチなのだ。
 ブッカー賞の発表前に最終候補作をぜんぶ読んだのは今年が初めてだ(注:あとで調べたら、07年に続いて2回目だった)。それどころか、発表前後にかかわらず、通算10冊も候補作を読んだのも初めてだが、理由は簡単で、ほとんどの作品がもうすでにペイパーバックで読めるからだ。2冊だけハードカバーで読んだ本がたまたま本命、対抗と思われるのは何かの因縁かもしれない。
 まだ読み残している候補作が3冊あるが、ふりかえると今年のブッカー賞は低調だったかもしれない。2006年の受賞作、Kiran Desai の "The Inheritance of Loss" や、去年の "Wolf Hall" のように文句なく他を圧倒している作品がなかったからだ。それでも "C" とこの "In a Strange Room"、それからショートリストには残らなかったが、David Mitchell の "The Thousand Autumns of Jacob de Zoet" は、今年のベスト3として十分に読みごたえがある。さらに言えば、Paul Murray の "Skippy Dies" かな。あと1日ゆっくり考えてから、今年のブッカー賞最終候補作「面白度」ランキングを決定したい。