ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Great House”雑感(2)

 仕事が佳境に入り、残業もしっかりこなして帰宅。それでも次の1話、"Swimming Holes" を読みおえた。これは心にしみる秀作短編だ。読了後、ふっと溜息をついてしまった。
 昨日、本書は「どうも長編ではな」く、「人物的におそらく関係のない独立した」短編から成り立っているのでは、という趣旨の感想を書いたが、これはなかなか面白い構造で、ひょっとしたらやっぱり長編なのかな、という気もしてきた。いや、正確には連作短編集か。というのも、第1話に少しだけ顔を出したチリの青年詩人がここで再び登場し、しかもかなり重要な役割を果たすからである。
 といっても主人公ではなく、物語は終始一貫、ロンドンに住む大学教授を中心に進む。彼の妻をくだんの青年が訪ねてきた場面から始まるが、それは大昔の出来事で、ここでもやはり4半世紀におよぶ心の歴史が繰りひろげられる。いや、妻との出会いの回想などもふくまれるので50年以上か。
 妻はポーランドユダヤ人で、第二次大戦直前にロンドンへ移住。男はもちろん妻を愛しているが、彼女はいわば謎の存在で、心の奥に何やら深い悲しみを秘めている様子。その秘密が長い年月をへてようやく明らかにされるという物語だ。
 昨日も書いたとおり、第1話は「孤独、断絶、閉塞、喪失、疲労…そんな感覚に充ち満ちてい」て、第2話では「親子の葛藤が綿々と綴られる」のだが、この第3話は、同様の感覚に深い愛情を織りまぜながら夫婦の葛藤を描いたものと言えるだろう。これからさらにどんな共通項が出てくるのか先が楽しみだ。