ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Great House”雑感(5)

 今日は昨日より少し体調がよく、相変わらずカタツムリ君のペースではあるが、何とか次の1話、"All Rise" の後編を読みおえた。前編は第1部の第1話だが、これは第2部第2話。なぜ順番が入れ替わったのかはよくわからない。
 ともあれ主人公は前と同じ中年の女流作家で、舞台は新しくニューヨークからエルサレムへと移動。若いころ、チリの青年詩人から借り受けた机を4半世紀後、その娘が引き取りにきたあと、娘の残した連絡先がエルサレムということで彼の地を訪れる。前編同様、主人公が Your Honor に話しかける形ながら、実質的には内的独白がえんえんと続く。前編の冒頭から何か事件なり事故があったのだろうと思っていたが、ここでやっとその真相が判明。
 精神的危機におちいった女性の「孤独、断絶、閉塞、喪失、疲労…そんな感覚に充ち満ちている」のが前編だと述べたが、ここでもその基調は変わらない。作家として「存在の謎」にふれているものと信じてきたが、「それがもし間違っていたとしたらどうなのか」。別れた夫の思い出などもまじえながら、長い年月にわたる「内面への旅」、心の葛藤が綴られるうちに、前編と打って変わって激しい情熱が燃えあがり、それが事件へとつながる…。
 これまた、わが身をふりかえらずにはいられない作品で、人生、どこでどうトチ狂ってこんなになってしまったんだろう、と常日頃思うことの多いぼくは、そうそう、そうなんだよなあ、とうなずきながら読み進んだ。何かと物思いにふける秋にふさわしい短編かも。