今日はえらく冷えこみ、そのせいか風邪の熱がぶり返して終日頭が重かったが、それでも最後から2番目の話、"Swimming Holes" の続編を何とか読みおえた。これはつらい物語だ。
主人公は第1部と同じくロンドンに住む大学教授で、長年連れ添った妻がアルツを患った末に他界。その晩年に寡黙な妻が、じつは重大な秘密を胸のうちに秘めていたことがわかる。…というのは第1部の粗筋で、本編はその後日談。やはり内的独白の連続で、長年にわたる夫婦、さらには親子の葛藤がじっくり描かれる。
ほかの短編とのかかわりも述べられ、妻は愛用していた大型の机を4半世紀近く前、突然訪ねてきた例のチリの青年詩人に譲りわたす。で、今度は第1部の第4話に出てくるユダヤ人のアンティーク商が、その机を手に入れようと教授の前に現れる。数奇な運命の机が全編をつなぐ糸のようになっているとも思える。
本書の短編はどれも身につまされる話ばかりだが、これは特にそうだ。'My love for her was a failure of imagination.' (p.272) という言葉を目にしたときは、胸をグサッと刺される思いでたまらなかった。思い当たるフシがあまりにも多いからである。ああ、誤解だけが人生なのか…。