ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“I Hotel”雑感

 今週は今年の全米図書賞候補作のひとつ、Karen Tei Yamashita の "I Hotel" をボチボチ読みつづけ、今日も午後から取り組んでいたのだが、今話題の尖閣諸島の話が出てきたあたりで、最初から萎え気味だった読書意欲がさらに減退。一向に乗れないのでもうあきらめた。何年ぶりかな、途中で本を完全に放り出すのは。
 読んだ箇所について言えば、主な舞台は1968年のサンフランシスコのチャイナタウンで、中国系や日系の学生が起こしたストライキ、要は学生運動が大きな事件。背景としてヴェトナム戦争文化大革命の話も出てくる。意味論の論文が挿入されたり、孔子ポール・ヴァレリーなどの言葉が何度も引用されたりして変化に富んだ構成だし、何だかやけにエネルギッシュな文体。きっと最後まで読めば大変な作品なんだろうな、とは想像するのだが…。
 でもこれ、ぼくのいちばん苦手なタイプの小説ですね。ぼくは学生時代はノンポリだったし、今も人と政治の話をすることはほとんどない。政治に興味がないわけではないのだが、政治的な話題がしきりに出てくる小説には耐えられない。あ、同じ政治小説でも、もっと根元的な思想にからんだものなら大好きなんだけど…。
 おまけにこれは大型の辞書なみに分厚い本で、持ち歩くのにたいへん不便。そんなこんなであきらめた。その代わり、と言っては何だが、どうせヴェトナム戦争が出てくるのなら、今日は今から何年ぶりかで「地獄の黙示録」を見ることにしよう。