ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Summer House”雑感(1)

 小説好きの知り合いのオーストラリア人に、David Mitchell の新作("The Thousand Autumns of Jacob de Zoet")はなかなかいいよ、と教えてあげたら、彼は勘違いして旧作("Number 9 Dream")を購入。その後、「どうだった」と感想を尋ねたところ、なんと最初の10ページで挫折したという。彼は Christos Tsiolkas の "The Slap" を 'Great!' と言っていたくらいなので、ああ、自分とはずいぶん趣味が違うんだな、と思うと同時に、今月初めに Karen Tei Yamashita の "I Hotel" を中途で投げ出してしまったぼくとしては、なるほど、native でも挫折することがあるんだ、と知ってホッとした。
 要は自分に合った本を読むのが読書の快楽ということだが、つい3日前、Katherine Webb の "The Legacy" を読みおえたぼくは急にメロドラマ路線を走りたくなり、今日から Mary Nichols の "The Summer House" に取りかかった。これは今年の8月ごろ、アマゾンUKのベストセラー・リストに Rachel Hore の "A Place of Secrets" がしばらく載り、その魅力的な表紙に惹かれて検索したところ、同書のほかによく購入されている本という例のリストで発見した作品である。どちらもさっそく買い求め、今ごろになってやっと読みたくなったわけだが、"The Summer House" のほうが若干売れ行きがいいようなので、こちらから先に手をつけることにした。
 で、これは今のところ、題名と表紙から察しがつくとおり、明らかにメロドラマである。プロローグの舞台は第一次大戦中のイギリスで、夫の出征中、貴族の若い女が屋敷に滞在していたカナダ兵と関係して妊娠。生まれた子供を父親の命令で手放す羽目になるものの、いつの日か再会することを心に誓う。本編が始まると、今度は第二次大戦に話が飛び、貧しい生まれの看護婦が主人公。結婚式を前日にひかえながら、婚約者の空軍将校が戦死。その子供を宿し、悲嘆にくれる彼女を部下の青年が慰める。
 …と粗筋を書いているだけで赤面もののメロドラマだ。けっこう長い小説なので、これからさらに紆余曲折があるものと思われる。この土日も「自宅残業」に追われそうだが、なんとかその合間をぬって楽しみたいものだ。