ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Remarkable Creatures”雑感(1)

 今年のオレンジ賞受賞作、Barbara Kingsolver の "The Lacuna" をボチボチ読みはじめたところ、先週末、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストで発見した Tracy Chevalier の "Remarkable Creatures" が早くも届いていたのを今朝、かみさんに知らされた。"The Lacuna" は大作だが、こちらはふつうの長さ。急遽、乗り換えることにした。
 Tracy Chevalier といえば "Girl with a Pearl Earring" が有名で、ぼくもかなり前に読んだことがあるが、内容は例によってすっかり失念。ただ、好印象を受けたことだけは憶えている。その後、あるまじめな文学青年と同書の話をしたとき、まるで歯牙にもかけず、といった彼の反応に、「たまにはあんなものも読まないとね」と答えたものだった。
 では、「あんなもの」とはどんなものなのか。Kingsolver のようなテーマ追求型、硬派路線ではなく、このところ、"The Legacy"、"The Summer House" と立て続けに読んでいるストーリー重視型、ソフト路線のことである。"The Lacuna" と "Remarkable Creatures" の冒頭の数ページを読み較べただけでも、両者の差は歴然としている。
 "The Lacuna" は大作ということもあるが、最初、ストーリーの方向がなかなか見えない。それが見えないうちに "Remarkable Creatures" を読みだしたら、こちらは早々に方向がはっきり示されている。同じ文学でもずいぶん違うものだな、と今さらのように思ってしまった。というわけで、今度もまた肩の凝らない小説です。粗筋にふれる時間はなくなったが、けっこう面白い。今週末は久しぶりにのんびり出来そうなので楽しみだ。