ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Both Ways Is the Only Way I Want It”雑感(2)

 本書は短めの短編集だ。英語もまあ簡単なほうなので、ほんとうは一気に読んでもいいのだが、じつはこのところ仕事帰りに毎日、映画館に足を運んでいる。今日も「ノルウェイの森」を見てきた。ぼくはもうあの世界にはあまり共感できない年齢になってきたせいか、イマイチ乗れなかった。それから、どうでもいいことだけど、昔はどこの大学ももっと薄汚れていたのではないかしらん。
 というわけで、本書は1日1〜2話のペース。今のところ、どれもだいたいモンタナが舞台で、主人公は若い世代が多い。第2話もそうで、川下りやキャンプを楽しんでいた15歳の少女がセクハラを受ける。当然、戸惑いや動揺が少女の心の中で広がるが、それは必ずしも嫌悪感とは言い切れない。東部の全寮制の学校へ転校するかどうか迷っていた少女は、「事件」の直後、決意を固める。
 第3話も「決意」がひとつのテーマと言えるかもしれない。建設中の原発で働いている20代初めの若者が主人公で、作業員仲間で高校時代の友人の死後、その恋人で若者の幼なじみが金集めにくじ引きを企画。賞品は彼女と一夜をともに出来るというもので、若者は作業員たちから金を集めてまわるが、自分自身はある決意を胸に秘めている。
 粗筋を書いてみると何ということもない話のようだし、実際そうなのだが、それでも少女や若者の「心のさざ波」がとても印象的だ。彼らも第1話の青年と同じようなキャラで、「孤独で内気、うぶな」ところがあり、「純情、欲求、衝動、自制心」などが「微妙に揺れつづけたあと、やがてある岐路を迎えて決断をくだす」。それがひょっとしたら本書のタイトルの意味なのかもしれない。