ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“A Happy Marriage”雑感(4)

 今日は久しぶりに映画館のハシゴをしてきた。ひょっとしたら学生時代以来初めてかもしれない。まず見たのが「君を想って海をゆく」。「フランスで大ヒットを記録した感動ドラマ」という宣伝文句に釣られたのだが、ぼくにはイマイチでした。そこで口直しにウディ・アレンの「人生万歳!」を見に行ったら、これは大正解! 終わったときに拍手をしたくなったが、周囲にその気配がないので思いとどまった。今年はなるべく映画館に足を運ぼう、というのが新年の抱負のひとつです。
 「人生万歳!」を見たかった理由はほかにもあって、舞台が今読んでいる "A Happy Marriage" と同じニューヨークだからだ。今日も電車の中と映画の始まる前に読んだだけで、相変わらずカタツムリ君だが、読んでいる小説と同じ舞台の映画を見に行くのはたぶん初体験。おかげで大いに気分が盛りあがり、帰りの電車とバスの中ではけっこうページが進んだ。
 現代編は今までどおりだが、ああ、やっぱりね、と思ったのが過去編である。このとき主人公の Enrique はまだ20代で、将来の妻 Margaret と出会い、やっと初キスを経て…というところだが、3年半もほかの女と同棲していたくせに、Margaret の前ではすっかり舞いあがってしまう。そのうぶな好青年ぶりにニヤニヤしていたら、'at heart, a virgin' というくだりが目に飛びこんできた。
 実際、過去編の Enrique は冒頭から like a virgin といった調子で描かれている。恋敵とのつばぜり合い、初デートや初キスのときめき…どれをとっても陳腐な出来事なのに、この清純さゆえに少なからず好感が持てるわけだ。若い読者なら現代編よりむしろ、こちらのほうに惹かれるかもしれませんね。