ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Lord of Misrule”雑感(1)

 映画や小説なら「テーマそのものには共感できなくても、作劇術や語り口などに魅了されることもあるはずだ」と昨日書いたが、ぼくの場合、それがまさに当てはまるのが音楽だ。年が明けてまたバッハに戻り、器楽曲を中心にBGMとして流しているが、耳の悪いぼくはテーマなんてさらさらわからない。ただ聴いていて心地よい。それだけだ。最近よく手が伸びるのは、クリストフ・ルセ盤のイギリス組曲。初めて聴いたとき、あまりにすばらしいのでビックリした。
 閑話休題。昨年の全米図書賞受賞作、Jaimy Gordon の "Lord of Misrule" にようやく取りかかった。ようやく、というのは、珍しくハードカバーを入手したのが受賞直後だったのに、届いた本の冒頭をちらっと読み、あ、これは後回しにしようと思ったからだ。ブロークンな英語で少し読みにくいし、内容も渋そうだった。
 今日はまだいくらも読んでいないので文字どおり雑感にすぎないが、これは当初の印象どおり、かなり「渋い」作品のようだ。少なくとも今のところ、派手なストーリー展開は皆無と言ってよい。舞台はウェスト・ヴァージニアの片田舎にある小さな競馬場。調教師や厩務員などが何人か登場し、中には中心的な役割を果たしているかに思える人物もいるが、主人公というほどではない。ひょっとしたら、これは競馬界の人々の群像を描いた小説かもしれない。幼いころから馬の世話をして家族と生き別れ、今では最後のすみかを夢見る孤独な老人や、激しやすい恋人との微妙な関係に心が揺れる若い娘あたりが気になる存在だ。さて、どうなるんでしょう。