ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jaimy Gordon の “Lord of Misrule”(1)

 去年の全米図書賞受賞作、Jaimy Gordon の "Lord of Misrule" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。

Lord of Misrule

Lord of Misrule

[☆☆☆★★] ウェスト・ヴァージニアの片田舎にある小さな競馬場を舞台とした、ローカル色豊かな競馬小説。章題どおり、それぞれ4つのレースが山場となる構成で、レースを通じて厩務員や調教師、騎手、賭け屋などが複雑に絡みあう。競馬ファンや馬好きの読者にはたまらない設定だが、正直言って前半はさほど面白くない。ゆるやかな筆運びで、「山場」といってもレースの実況中継に緊迫感があるわけではないし、南部訛りなのか業界用語なのか、とにかくブロークンな口語体で読みにくい。が、それは同時にこの世界の活写でもあり、最後のすみかを夢見る黒人の老厩務員や、昔の女に思いを馳せる賭け屋などの人生が次第に浮かびあがる。青年調教師と、彼が連れてきた若い女の厩務員との隠微な関係も興味をそそる。やがて第4レースが始まり、タイトルと同じ名前の本命馬が登場、それまで走った馬もふたたびゲートイン。この終幕はかなり盛りあがる。レース展開はスリリングだし、血と汗の匂いがする暴力シーンが連続するほか、厩務員たちが馬に注ぐ愛情に好感が持てるし、賭けという形で馬と関わる人々の人生が浮き彫りにされている点もいい。英語はとにかくブロークンで、波長が合うまで忍耐を強いられる。