昨日は「これからいよいよ本番のようだ」と思ったが、ううむ、どうもそうでもないらしい。
自分は生まれたときからずっと眠れない、と友人に打ち明けられたあと、主人公の少年は観察や実験をいろいろ試みた結果、彼の話を次第に信じるようになる。そのプロセスはまずまず面白いのだけど、だから何なんだ、という気がして仕方がない。眠れない人間という設定はたしかにユニークだが、そこにどんな深い意味があるのだろう。そのあたりがどうも不明確で、まだまだ本番とは言いがたい。
一方、少年は女の子と知り合い、パーティーに誘われて胸ドキドキ。会場はにぎやかな音楽と元気のいいダンスで盛りあがり、やがて2人きりになったところで…。このくだりもまあ悪くはないのだが、こんな場面は「アメリカン・グラフィティ」をはじめ、あちらのハイスクール物の映画やTVドラマで何度も見かけたような気がする。テンポのいい文体はとてもいい感じなのだけど…。
というわけで、これは今のところ、「眠れない少年」が出てくる点だけが一風変わったごくふつうの青春学園小説と言わざるをえない。しかし何しろ、アレックス賞受賞作だ。この先、ほんとうに本番が始まることを期待しましょう。