ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

DC Pierson の “The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To”(1)

 今年のアレックス賞受賞作の一つ、DC Pierson の "The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To"(2010)をやっと読みえた。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆★★] 尻上がりに面白くなる。当初はいっぷう変わった、しかし骨子はありきたりの青春学園小説かと思いきや、やがてオフビートな展開が主流になり、さいごは大昂奮のSF冒険小説である。アリゾナの田舎の高校に通う、漫画の得意な少年ダーレンが友だちのエリックといっしょにSF映画の構想を練っているうち、エリックがなんと、自分は生まれつき「眠れないし眠らなくてもいい」と告白。だがこの「いっぷう変わった」点、なかなかあとがつづかない。パーティ、セックス、ドラッグ、恋の鞘あて。ごくふつの高校生活がしばらく現代の若者ことばで活写されるだけ。と、ある日突然、「不眠能力」の持ち主エリックが幻覚症状に襲われ、その発作がなんども起きるようになると、それ以前もあったコミカルでドタバタ気味の騒動が、一気にSFアクション映画のような大冒険へと発展。しかも幕切れにはしみじみとした余韻ものこる。一種の「ミュータント少年」を起用したことで、定番の通過儀礼が異彩を放つ青春小説の佳篇である。