ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Heidi W. Durrow の “The Girl Who Fell from the Sky”(2)

 さて今日は本書の続き。たった2冊とはいえ、べつの本について1日おきに書くのは初めてで、ボケた頭がこんがらがらないようにするだけでも大変だ。
 で、改めて表紙をながめてみると、Bellwether Prize 受賞作との宣伝文句が…。この賞には何となく記憶があるので検索してみたら、ははあ、これは Hillary Jordan の "Mudbound" が06年に栄冠に輝いた賞だった(http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20090310)。そのレビューを書いたのがちょうど2年前の今日で、同書はアレックス賞も取ったというのがきっかけで読んだ憶えがある。あれからずいぶんハゲました。
 この賞は社会正義の問題を扱った優秀な小説に隔年で与えられるものなのだそうで、"Mudbound" について自分が書いた記事を読みかえしてみると、たしかに人種差別が同書の底流に流れているようだ。…何だか他人事みたいな言いぐさだが、何しろ2年前に読んだ本なんて、少しずつ記憶をたどるしかない。これでも "Mudbound" はよく憶えているほうだ。
 この "The Girl Who Fell from the Sky" もレビューに書いたとおり、その背景というか土台にはやはり人種差別の問題がある。本書はミステリ・タッチの部分もあるのでネタばらしを避けるため、これ以上は書けないが、とにかく一風変わったタイトルの意味を考えながら読むのが本書を楽しむコツだろう。もちろん現象的にはすぐわかるのだが、問題はその奥にひそむ本質である。「空を飛んだ」ときの少女の胸の内を思うと言葉に窮してしまう。まさしく「胸をえぐられる場面の多い佳篇である」。