Cynthia Ozick の旧作短編集 "The Shawl"(1989)を読みおえた。例によってまずレビューを書いておこう。
[☆☆☆★★] 第二次大戦中におけるユダヤ人の迫害を主題とする小説は数多いが、本書は、彼らが受けた心の傷の痛みを散文詩的に綴った短編集。正確には短編と中編、それぞれひとつずつ収めた小品集である。まず表題作の短編では、ポーランド系ユダヤ人の若い母親ローザとその姪ステラ、歩きはじめたばかりの幼い娘マグダが強制収容所で悲劇に襲われる。ショールの扱いかたがじつに巧妙で、マグダを不憫に思う気持ちが募ったところへ衝撃的な事件。ローザの悲痛な叫びが聞こえてくる。約四十年後、マイアミに移住したばかりのマグダの日常生活を描いた中編では、同じショールが記憶の引き金となり、悲劇がもたらしたトラウマや、過去への妄執、狂気に近い妄想などが浮き彫りにされる。オフビートな不条理の世界だが、現実から遊離したマグダの言動に傷の深さが端的に示され、最初の短編ともども言葉をうしなってしまう。行間に感情がぐっと凝縮された佳篇である。