ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Cynthia Ozick の “The Shawl”(2)

 恥ずかしながら Cynthia Ozick のことも最近まで全然知らなかった。彼女はけっこう有名な作家らしく、本書の読後、すでに邦訳が出ていることを発見した。

ショールの女

ショールの女

 ぼくがこの原書を入手したのは去る2月で、今週初めに読みおわった Julie Orringer の "The Invisible Bridge" などと同じく、今年の全米批評家(書評家)協会賞の候補作、Hans Keilson の "Comedy in a Minor Key" の関連書として、この "The Shawl" があちらのサイトで挙げられていた。"Comedy...." を読まなかったら、Ozick とは未だに縁がなかったことだろう。
 読みはじめてすぐに気がついたのだが、これはテーマ的に "The Invisible Bridge" と同系列の本で、それは "Comedy...." にも当てはまる。とはいえ、3作のおもむきは、とりわけ大河小説の "The Invisible Bridge" と短編集である本書の作風はずいぶん異なっている。
 これはレビューにも書いたとおり、迫害を受けたユダヤ人の「心の傷の痛み」という一点に的を絞ったアプローチだ。当時の悲劇と後日談からなるこの小品集は、まさしく「山椒は小粒でもぴりりと辛い」というやつで、えぐりの鋭さは、なかんずく表題作のほうは、"The Invisible Bridge" にも決して引けをとるものではない。同書の深い感動がさめやらぬうちに読んだのもよかった。ある本を読んだあと、自分が知らない作家の関連書も読むというのは、洋書オタクのあるべき姿のひとつですな。