ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Hothouse Flower”雑感(1)

 今日の午後から本腰をいれて、Lucinda Riley の "Hothouse Flower" に取りかかった。今年の1月末、イギリスでベストセラーになっているのを知り入手したが、600ページ近い大長編なのでついあと回しにしてきた。たしか先日まで、現代小説部門でずっと100以内をキープしていたはずだ。
 食指が動いたのはミーハー趣味丸出しで、タイトルと魅力的なカバー写真から察するに、きっと文芸エンタメ路線のロマンスにちがいないと思ったからだ。それに、このところ "A Visit from the Goon Squad" をはじめ、有名な文学賞の受賞作や候補作ばかり読んでいたので、この辺でちと息抜きをしたくなった。
 で実際取り組んでみると、これは今のところ、期待どおり軽い読み物である。ジェットコースターというほどではないが、スポーツカーにでも乗っているような感じでクイクイ読める。最初は歯ごたえのなさが気になったが、そのうち物語の渦中に引きこまれてしまった。
 舞台は現代のノーフォークから始まり、事故か何かで夫と息子を亡くしたらしい女性が登場。その祖父が庭師をつとめていた貴族の館が売却されると聞き、財産処分セールに出かけたところ、少女時代に一度だけ会ったことのある当主の青年と再会する。さてはこの2人が恋に落ちるのか、と思ったが、そうでもないらしい。いや、わからない。
 ともあれ、祖父が住んでいた邸内のコテージから日記が発見され、それを女性が祖母に届けに行ったところ、それには昔の重大な秘密が隠されていると祖母は言う。そこで話は1939年にさかのぼり、社交界にデビューしたばかりの娘が登場。ノーフォークの貴族の館を訪れ、ハンサムな息子に恋をする。
 …と粗筋をまとめただけで赤面もののロマンス小説…なのかな。が、現代編にも過去編にも悲劇的な謎が隠されているようだし、それぞれのヒロインが足を踏みいれる邸内の温室と、そこに咲く美しいランの描写がとても蠱惑的。息抜きに読みはじめたのだから、重箱の隅をつつくのはやめて思いきり楽しまなくちゃ。