ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Matterhorn”雑感(1)

 世間は今日からゴールデン・ウィークだが、ぼくの連休は勤務先の都合で来週の火曜日から始まり、今日も出勤。それでも覚悟を決めて、Karl Marlantes の "Matterhorn" に取りかかった。なにしろ、Trade Paperback で活字がぎっしり詰まった600ページの大作だ。持ち運びに不便なことこの上ない。
 本書に興味をもったのは、去年のギラー賞受賞作、Johanna Skibsrud の "The Sentimentalists" を読んだのがきっかけで、同書と同じく、この本もヴェトナム戦争を扱った作品だからだ。タイム誌の年間ベスト10に選ばれるなど去年の話題作でもある。
 ただ、なぜ今ごろヴェトナム戦争の小説なのか? それがおそらく本書の評価にもかかわるのではないかと思われるが、ともあれ、ぼくはあの戦争を主題に採りあげた作品を今まで読んだことがない。"The Sentimentalists" にしても、従軍兵の後日談といったもので本格的な戦闘シーンはなかった。
 が、映画ならいくつか観たことがあり、「ディア・ハンター」、「地獄の黙示録」、「フルメタル・ジャケット」などは今でも鮮明に憶えている。当然、作者も観ているはずで、映像と活字の違いはあっても、本書を執筆するうえで何らかの影響を受けているのではないか、などと思いながら読みはじめた。
 今はまだ序盤だが、兵士の身体のあちこちにヒルが吸いつく場面は、たしか「ディア・ハンター」にもあったはず。この若い少尉は「地獄の黙示録」でちょい役だったころのハリソン・フォードが演じるといいのかも、などと勝手に連想しているうちに、定石ながら突如、緊迫した戦闘シーンが開始! 一気にとりこになってしまった。明日も仕事があるが、どうやら「通勤快読」になりそうだ。