ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Matterhorn”雑感(2)

 ありゃ、Jennifer Egan の "A Visit from the Goon Squad " が、ロサンジェルス・タイムズ紙小説大賞(LA Times Book Prize for Fiction)も取ってしまった! これでピューリッツァー賞、全米批評家協会賞とあわせて3冠王。去年のアメリカ最大の話題作というわけだが、ほんとにそんなにいいのかな。天の邪鬼のぼくには、Tom Rachman の "The Imperfectionists" のほうがずっと心に響いたんだけど…。
 閑話休題。今日も電車とバス、それからこっそり職場でも "Matterthorn" を読みつづけた。昨日期待したほど「通勤快読」にはならなかったが、それでも超大作の戦争小説の序盤なんてこんなものじゃないかな。のっけからドンパチばかりだと先がもたないだろう。
 また、「なぜ今ごろヴェトナム戦争の小説なのか?」という疑問もまだ序盤のせいか、明らかにされていない。描かれるのはもっぱら、偵察や急病人の手術、作戦会議、塹壕掘りといった「戦闘準備場面」で、人間的な要素としては、いちばん出番の多い新米少尉を中心に、戦場ならではの恐怖と不安、緊張、名誉心や出世欲、黒人兵と白人兵の対立などだ。戦争そのものへの疑問も言葉のはしばしからうかがえる。つまり今のところ、ヴェトナム戦争を扱った作品と聞いて思いうかぶ内容ばかりで、べつに新味はない。
 ただ、場面が戦場のみという小説を読むのはこれが初めてで、それなりに面白い。中でも2度ばかりあった戦闘シーンは迫力満点だ。これからもっと緊迫の度が高まることを期待したい。