ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Amanda Hodgkinson の “22 Britannia Road”(1)

 去る4月、米アマゾンで月間最優秀作品に選ばれた Amanda Hodgkinson の "22 Britannia Road" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。

22 Britannia Road: A Novel

22 Britannia Road: A Novel

22 Britannia Road

22 Britannia Road

[☆☆☆★★] 戦争がらみの家族メロドラマの佳作。物語は第二次大戦終戦の翌年、幼い息子を連れてイギリスに渡ってきたポーランド難民の若い女が6年ぶりに夫と再会したときから始まる。幸せな家庭生活が再開するはずだったが、夫は戦時中、フランスで知りあった女のことが忘れられない。妻のほうも何か重大な秘密があるようす。その鍵を握っているのはどうやら父親を敵視する息子らしい。サフォーク州の小さな港町を舞台に夫婦と親子の葛藤が描かれる現在編と、独ソによるポーランド分割以来、夫婦がそれぞれの立場でくぐり抜けた修羅場の過去編が交互に進行する。類型的な人物、定石どおりの展開、平板な描写といった欠点に目をつぶりながら読んでいると、とりわけ妻が遭遇した危機的な事件や、2人の秘密が明らかになった瞬間などに胸をえぐられる。家族の意味について考える、いいきっかけとなるかもしれない。英語は平明でとても読みやすい。