雑感にも書いたとおり、ぼくが読んだのは Trade Paperback 版のほうだが、食指が動いたのはハードカバーの表紙を目にしたのがきっかけだ。こういう見てくれのいい本に飛びつくと、外見どおり内容もすぐれている場合もあれば見かけ倒しのこともある。ヒットする確率は、カワイコちゃん(古い言い方だなあ)よりは高いかもしれない(単なる老人の偏見です)。
本書はどうかと言うと、やや外れのほうかな。思わず引きこまれた場面もあり、とりわけ終盤ほど目が離せなかったのだが、全体を通じて「類型的な人物、定石どおりの展開、平板な描写といった欠点」が目だつ。が、英語は読みやすいし、深刻ながら深い内容でもないので、通勤時に肩の凝らないものを読みたい、とにかく英語馴れしたい、という読者にはオススメ。
冒頭はこんな具合だ。The boy was everything to her. Small and unruly, he had a nervy way about him like a wild creature caught in the open. All the dark hearts of the lost, the found and the never forgotten lived in his child's body, in his quick eyes.
あらためて読みかえしてみると、なるほどね、という書き出しで、本書の中心をなすミステリの伏線が早くも張られている。それにしても、今年はまったく偶然なのだが、第二次大戦が出てくる小説を読むのは、これでなんと7冊目。東欧に関係する話にかぎっても3冊目だ。いったいどうしたんでしょうかね。