ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“South Riding”雑感(1)

 このところ多忙で本が読めず、今日からやっと Winifred Holtby の "South Riding" に取りかかった。これは去る2月下旬ごろイギリスでベストセラーになっていた本で、いかにもイギリスの田園風景らしい絵のカバーをひと目見て気に入った。
 ほかにも興味を惹かれた点がある。これはなんと1936年の作品なのだ。それがどうして今ごろベストセラーになるのだろうと不思議に思ってネットで調べたところ、疑問は氷解。上の時期にイギリスでこのTVドラマが放映されていたのだ。しかも、38年の映画化に始まり、74年に初TVドラマ化、99年にラジオドラマ化、そして今回と、本書はイギリスでは非常に有名な作品らしい。それを知らなかったとはまことにお恥ずかしい次第だが、「新潮世界文学辞典」を引いても Winifred Holtby は載っていなかった。メジャーな作家ではないのかもしれない。
 ページをひらいてびっくりしたのは、巻頭に掲げられた登場人物のリスト。いくら大長編といってもこんなに多いとは! 最近とみにボケ気味のぼくには、いきなりパンチを食らった感じで早くも戦意喪失といったところだが、いざ読みはじめてみると、人物関係はさほど複雑でもなく、またそれぞれのキャラクターもしっかり造形されているので、リストから受ける印象ほど大変な作品ではない…と思いたい。
 ジャンルとしてはローカル・ピースかな。舞台は1932年、ヨークシャー州の田舎町。South Riding County Council のにぎやかな補欠選挙に始まり、議員の一人が理事をつとめる Kiplington High School という女子高校の新校長 Sarah Burton がロンドンから赴任してくる。どうやら彼女が主人公らしく、教育熱心な彼女はこの小さな学校の改革に乗り出そうと大いに情熱を燃やしている。
 今日はまだほんの序盤なので何とも言えないが、ローカル・ピースらしく風景は魅力的だし、ときどきユーモラスな描写もあってまずまず楽しい。が、それにしても大長編の始まりだけあって、じつに悠々たる展開だ。しばらく超多忙の日々が続きそうなので、どうも読む本を間違えたかもしれませんね。