ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“South Riding”雑感(2)

 案の定、すっかりカタツムリ君になってしまい、なかなか遅々として進まない。理由は超多忙ということもあるが、いくらローカル・ピースが大好きなぼくでも、本書のペースがあまりにもゆるやかで、つい眠気をもよおしてしまうからだ。
 とはいえ、ここには興味深い問題が2つあることに気がついた。まず、本書はなぜイギリス人にとって大衆受けのする作品なのか。すでに述べたとおり、これはこの80年近くにわたって計4回も映画やテレビなどでドラマ化されている。その人気の秘密は何なのだろうか。
 次に、それほど人気のある作品を書きながら、作者 Winifred Holtby はなぜ文学史の中で埋没してしまったのか。「新潮世界文学辞典」で無視されているだけでなく、念のためその後、手持ちの "The Oxford Companion to English Literature" (4th ed.) も調べてみたが、やはり載っていなかった。
 この2点をまとめると、イギリスの一般大衆はTVドラマなどを通じて本書の世界をとても楽しんでいる風情なのに、本書が文学史的には評価されていない理由は何なのか。どうです、なかなか魅力的な謎でしょう。
 これは1936年の作品で Holtby の遺作ということなのだが、上の辞典の巻末にある世界文学史年表をざっとながめてみると、ほぼ同じ年代のイギリスの作品でぼくが読んだことのあるものといえば、ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』(28)、ウォー『衰亡』(28)、グリーン『権力と栄光』(40) といったところ。ははあ、なるほどね。
 じつはもう、上の謎の答えをつかんだつもりで読んでいる。何だか思わせぶりな書き方だが、明日も忙しいので早く寝なくては。関係ないが、寝床で読んでいる「BEST13 of ゴルゴ13」のほうが今のところ面白い。