ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011年ベスト10小説と “The Memory of Love” 雑感(3)

 さっそく David Foster Wallace の "The Pale King" が届いたが、これは夏休み用ですな。不勉強のため未読の作家だが難物らしいし、何しろ分厚い。しかし「サロン・ドット・コム」にも載っている著名作家なので、いつかは try しなくては。
 ところで、どれだけ権威があるのかは知らないが、ぼくが見かけたアメリカの2011年ベスト10小説 (!) には、Haruki Murakami の "1Q84" も載っていた。Wallace と Anne Patchett、Téa Obreht のほかは、Jeffrey Eugenides の "The Marriage Plot" (10.11刊行予定)、William Kennedy の "Chango's Beads and Two-Tone Shoes" (9.29)、Colson Whitehead の "Zone One" (10.18)、Russel Banks の "Lost Memory of Skin" (9.27)、Ha Jin の "Manjing Requiem" (10.18)、Jonathan Evison の "West of Here" (既刊) というラインナップ。錚々たる顔ぶれのようだが、今この時期のリストだけに、はてどうなんでしょう。
 さて、柄にもなく新刊情報でお茶を濁しているのは、"The Memory of Love" が意外に早く進み、さりとてまだ裏表紙の紹介文にあるほど読んだわけでもなく、どこまで粗筋を書いていいのかわからなくなったからだ。ただ、タイトルどおり、ひとつの柱は登場人物たちの昔関係した女の話であり、そこにシエラレオネの内戦が深くかかわっていそうだ、ということくらいはバラしてもいいだろう。
 I heard a song, a morning as I walked to college. It came to me across the radio playing on a stall I passed. A song from far away, about a lost love. At least so I imagined, I didn't understand the words, only the melody. というのが冒頭の一節だが、ぼくはこれを読んだとたん、中島みゆきの「りばいばる」を思い出した。が、その後、もちろん奥に秘めた情熱は汲みとれるものの、すでに述べたように感情を抑制した static な筆致がつづき、みゆきの歌ほど感傷的ではない。
 The memories come at unguarded moments, when he cannot sleep. .... The hollowness in his chest, the tense yearning, the loneliness he braces against every morning until he can immerse himself in work and forget. Not love. Something else, something with a power that endures. Not love, but a memory of love. (pp.184-185)
 これがタイトルに関係のあるくだりで、上の I とこの he は別人だが、どちらもその恋には内戦の悲劇がからんでいるようだ。これからそのドラマが始まるはずで、今日は嵐の前の静けさといったところ。