Anne Enright の最新作、"The Forgotten Waltz" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆] 題材はいわゆるダブル不倫だが不潔感はなく、むしろ、愛の喜びと悲しみ、苦しみを芸術的に表現している点に好感がもてる。べつに目新しい話ではない。ダブリンに住む若い女ジーナが、結婚前に見そめた妻子ある男ショーンと恋に落ちる。単純明快な展開で、とくに劇的な事件が起こるわけでもない。ただ、文章表現としては見るべきものがある。ウィットに富み、切れ味鋭い、活き活きとした力づよい文体で、ジーナのゆれ動く心情が直截に伝わってくる。亡き父母の思い出話はリリカルで、しんみり。ふたりの不倫現場を目撃したショーンの娘とジーナの微妙なふれあいもみごとに演出。これはそうした技巧を楽しむ小説であり、それ以外のなにものでもない。