ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“City of Bohane” 雑感(2)

 昨日は出勤日であまり読めなかったが、今日は何とかノルマを達成。もう粗筋を書けないところまで読みすすんだ。相変わらず、出来はかなりいい。
 その後いくつか明らかになったことがある。ネタばらしにならない程度にメモしておこう。まず、前回はてっきり現代の話だと思っていたのだが、それがなんと2050年代、近未来の設定だった。それにしては科学文明とはまったく縁遠い世界で、昔は大都会だったというアイルランド西部の半島にある港湾都市、Bohane が舞台。
 そこでギャングの抗争が繰りひろげられるわけだが、このギャング、せいぜい2グループかと思いきや、少なくとも10のファミリーが街とその周辺を支配している。中には、近未来どころか、古代ローマ時代やロビン・フッドの時代を思わせるような「蛮族」もいて、その戦闘シーンを新聞記者がカメラで撮影する、といったアンバランスな組み合わせが面白い。
 また、ギャングが闇の社会に生息しているのかと思ったら、それが決して闇ではなく、ボスもその手下も市民生活の表舞台に登場し、市民はべつのファミリーによる支配を望まず、警察も抗争劇を傍観、事件のもみ消しを図るほどだ。
 とにかく奇抜な設定だが、その意図はさっぱりわからない。しかも、抗争劇はイントロみたいなもので、本筋はどうやら、今のボスとその妻、妻の元カレで昔のボスの三角関係にあるようだ。なぜ昔のボスが街を飛びだし、そして25年ぶりに街に帰ってきたのかなど、これについても不明の点が多いのだが、とにかくエネルギッシュな文体に圧倒される。ユニークな背景と先の読めない展開、文体の魅力が本書の「売り」なのかもしれない。