ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Stephen Kelman の "Pigeon English" (1)

 今年のブッカー賞候補作、Stephen Kelman の "Pigeon English" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。

Pigeon English

Pigeon English

[☆☆☆★★] 衝撃の結末を期待していたら期待どおりだった。それゆえ意外な展開とは言えないが、それでも途中の構成は巧妙に仕組まれている。主人公はロンドンの高層団地に住む、ガーナ出身の11歳の少年。彼の1人称1視点で、まるでジグソーパズルのピースを少しずつ、それもまったく異なる絵柄の部分を同時に組み合わせていくように、家庭環境や学校生活、校外での友人たちとの交流などがコミカルに、かつ、きびきびと綴られる。中心の絵模様は、思春期特有の無邪気で未熟、しかし真剣な心がさまざまな現実と出会い、経験を重ねていく通過儀礼だ。ブレイクの詩集ほど哲学的な深みはないものの、これはまさに現代版『無垢と経験のうた』と言ってもいいだろう。冒頭、少年はある殺人事件の現場を目撃し、やがて大まじめにその捜査に乗りだす一方、団地で少年に助けられた1羽の鳩が少年の行動を見守るようになる。この鳩の扱いは必ずしも完璧ではないが、それでも少年の「無垢と経験のうた」を最後まで見届ける「証人」として、「衝撃の結末」に彩りを添えている。目新しい俗語も散見されるが、英語はかなり読みやすい。