ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Gold Boy, Emerald Girl” 雑感

 今週はバテバテ。明日も出勤なのでユーウツだ。今読んでいるのは今年のフランク・オコナー国際短編賞の最終候補作、Yiyun Li の "Gold Boy, Emerald Girl"。Yiyun Li といえば、この賞の第1回受賞作、"A Thousand Years of Good Prayers" (05) で有名な作家だが、恥ずかしながら同書は長らく積ん読。いつか catch up しなければ、と思っているうちに最新の短編集が出てしまった。
 ボチボチ読んでいるのでまだ途中だが、これ、なかなかいいですね。今までのところ、同じく今年の候補作、Alexander MacLeod の "Light Lifting" より若干落ちるかな、という気はするものの、受賞した Edna O'Brien の "Saints and Sinners" よりはぼくにはしっくりくる。とりわけ、中編に近い長さの第1話 'Kindness' がとてもいい。
 北京郊外に住む独身の中年女が主人公で、若いころ、人民解放軍に入隊して受けた軍事訓練などを回想する話だが、題名どおり、人が人に示す親切や好意のもつ深い意味がテーマである。Kindness binds one to the past as obstinately as love does, and no matter what you think of Professor Shan or Lieutenant Wei, it is their kindness that makes me indebted to them. (p.78)
 Proferssor Shan というのは、女の娘時代、近所に住んでいた老婦人で、ディケンズやハーディ、ロレンスの小説を朗読してもらい、小説にからんでいろいろな人生の知恵を教わったりした相手だ。一方、Lieutenant Wei は解放軍時代の上官で、厳しい訓練や過酷な行軍の最中、意外にも人間的な側面を示してくれた思い出がある。
 女はじつは養子で、両親とは血のつながりがない。それを暴露したのが Proferssor Shan で、そのせいか女は頑固で孤独を守り、他人の好意や愛情を容易に受けいれようとはしなかったが…。泣ける話をさらっと締めくくるあたり、相当な腕達者ですな。