ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Erin Morgenstern の “The Night Circus” (3)

 頭痛はだいぶ治まってきたが、まだ時折、首筋にぴくっと電気のように痛みが走り、気休めに湿布を貼っている。ネットで調べるとストレッチがいいそうだ。これから毎日実践しようと思っているが、意志の弱いぼくには、この「毎日」というのがツライ。
 さて、"The Night Circus" だが、これはぼくが選んだ去年のベストテン小説の中でも、ストーリー性という点では3本の指に入るくらいおもしろい。その魅力については米アマゾンのレビュー(今現在、なんと626本!)などにたっぷり書かれているはずだ。そこでアマノジャクのぼくは、本書がすぐれた作品であることを十分認めたうえで、「お門違いの注文」について、さらに詳しく論じてみることにしよう。「現実と非現実の混淆する世界を現出することによってしか描きえない人間の現実とは何なのか。その意味がしかと伝わってこない憾みがある」という問題点である。
 ぼくは上の「注文」を自分のレビューに書き添えたとき、チェスタトンの『正統とは何か』に出てくるこんな言葉を思い出していた。「狂気には一種異様な詩美があるとしたところで、それを味わうのにはこちらが正気でなければ始まらぬのだ。…要するに異常を異常と思うのは尋常の人だけで、異常な人は異常を異常とは思わない」(蘄田恆存・他訳)
 この「狂気」や「異常」を「非現実」、「正気」や「尋常」を「現実」と置き換えてみると、SFやファンタジーマジック・リアリズムの小説など、非現実の世界を扱った文学作品にたいするぼくの基本的な見方を要約したものになる。
 …長くなりそうなので、今日はこのへんで。なお、今年のコスタ賞の優秀長編賞は Andrew Miller の "Pure"、優秀新人賞は Christie Watson の "Tiny Sunbirds, Far Away" に決定したようだ。

Pure

Pure

Tiny Sunbirds, Far Away

Tiny Sunbirds, Far Away