昨年の全米図書賞受賞作で、今年のアレックス賞受賞作のひとつでもある Jesmyn Ward の "Salvage the Bones" を読みおえた。例によってまずレビューを書いておこう。
[☆☆☆★] 疾風怒濤の青春時代を描いた小説といえば、ある一定の筋書きが思いうかぶものだが、本書はメッセージもふくめ定石どおり。主人公の心中の嵐と対応して、実際にもハリケーンが吹き荒れる点が目新しいくらいか。舞台はミシシッピ川河口の町。純情な高校生の黒人娘エッシュが妊娠するが、相手の少年にはべつの彼女がいる。当然、揺れる恋心と不安が綴られるものの、要はそれだけの話。一方、エッシュの兄スキーターの愛犬チャイナが出た闘犬の試合は緊張感にあふれ、読ませる。スキーターがたえずチャイナに愛情をそそぎ、それが最後、エッシュの再生への希望につながるなど、この犬の扱いかたはうまい。やがてハリケーン・カトリーナが襲来、とくれば想像のつく内容ながらやはり迫力満点。町の破壊と少女の傷心が重なり、そのあと「再生への希望」が示される。おみごと、と叫びたいところだが、さほど感動しなかった。たぶん、「メッセージもふくめ定石どおり」に鼻白んだせいだろう。