ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Andrew Miller の “Pure” (3)

 今日は少しだけ、Andrew Miller の "Pure" について補足しておこう。「作者は本書を通じていったい何を訴えたかったのだろう、こんな『裏話』を採りあげることにどんな意味があるのか、と疑ってしまう」と昨日書いたあと、ぼくなりに作者の意図をいろいろ推測してみた。とくに教会の取り壊しは「革命の勃発を予感させる」ものだし、ネタはばらせないが結末にもそんな雰囲気が漂っている。そこで、おとといのレビューに次の一文を付け加えることにした。「革命を象徴する寓話と考えても、今さら何の意味があるのか不明」。
 まあ、「寓話と考え」れば、いちおうつじつまの合うフシはあるかな、と思ったのだけれど、寓話なら寓話で深い意味がこめられていなければならないはずだ。ところが、作者の歴史観は一般常識の域を出ず、これを読んで知的昂奮を覚えることはまずないだろう。たとえばメルヴィルの『船乗りビリー・バッド』におけるクラッガート殺しには、フランス革命をはじめとする近代史の流れを読みとることができるのだれど、そういう過去の名作を思いうかべるにつけても、"Pure" の底の浅さにはガックリきてしまう。とにかく、なんで今ごろフランス革命の本なんでしょうかね。