ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Kevin Wilson の “The Family Fang” (1)

 Kevin Wilson の "The Family Fang" を読了。去年のタイム誌選定ベスト10小説のひとつで、アマゾンUKの小説部門でも優秀作品に選ばれている。さっそくレビューを書いておこう。

Family Fang

Family Fang

Family Fang

Family Fang

[☆☆☆★★★] 終始一貫、芸術至上主義を題材にしたファースだが、子供が親から真の意味で独立する通過儀礼を描いた青春小説でもある。最初は笑いの連続だ。ファング夫妻が未婚のカップルを装って派手なプロポーズ劇を演じてみせるなど、公共の場で次から次にパフォーマンス。それを芸術と自画自賛する。この「ハプニング芸術」に渋々つき合わされるのが二人の子供で、成長した彼らの物語も平行して進む。女優の姉は半裸姿をネットでさらされたり、作家の弟はジャガイモ銃で撃たれて重傷を負ったり、こちらも読んでいてプッと噴きだすドタバタ劇だ。ところが中盤、夫妻が謎の失踪を遂げたあたりから、コメディーの要素も残しつつ、次第にシリアスな様相を呈しはじめる。両親は何者かに殺害されたのか、それともやはり今度もパフォーマンスなのか。子供たちの混乱はつのるばかりだが、これこそ人生の混沌を表現しようとした両親の思うツボかもしれない。巧妙に挿入された昔の「芸術」記録と相まって、このあたり、何やらオフビートな不条理劇とも言える。夫妻の芸術至上主義はケッサクなしろもので、笑えるという意味でも不思議という意味でもおかしい。親離れをしいられる子供たちの通過儀礼にしても、定番のほろ苦さだけでなく風変わりな味わいで、とにかく型破りのファースである。英語は標準的で読みやすい。