ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Ten Thousand Saints” 雑感

 今週は Eleanor Henderson の "Ten Thousand Saints" をボチボチ読んでいた。ニューヨーク・タイムズ紙が選んだ昨年の 10 Best Books の1冊で、おととい紹介したとおり、PPrize.com の予想によると、今年のピューリッツァー賞 “候補作” でもある。
 このところ年度初めとあって何かと忙しく、今日も午後に帰宅してからちょっと読んだだけだが、忙しさを差し引いてもクイクイ度はやや低い。まずまずの出来ばえというのが第一印象だ。
 1980年代のアメリカの話で、舞台は最初、ヴァーモント州の田舎町だったが、今はニューヨーク。ティーンエイジャーの少年少女が主人公だ。酒タバコ、シンナー、マリファナ漬けの高校生 Jude と Teddy がまず登場し、問題行動を起こすうち、それぞれの複雑な家庭環境が明らかになる。Jude は養子で、幼いころに養父が女を作って離婚。Teddy のほうも父親が服役中で、今また母親が出奔。キャラの差はあるが、2人とも孤独で傷つきやすい点では一致している。そこへ折しも、Jude の養父が現在つき合っている女の娘 Eliza がニューヨークからやって来て、2人の少年と意気投合。Teddy にコカインを飲ませ、そのあと……。
 ……そのあと大事件が起こって舞台はニューヨークへと変わり、今は Teddy の異母兄 Johnnyも登場、次第に存在感を増している。ロック・ミュージシャンでタトゥー彫り師、はたまた新興宗教の信者ということで、序盤のドラッグが幅をきかせるアングラ・ムードの作品世界が微妙に変化しつつあるのだが、まあおそらく、通過儀礼を描いた青春小説なんでしょうな。ちと眠い筋立てです。