ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Eleanor Henderson の “Ten Thousand Saints” (1)

 先週の月曜日、愛媛の田舎で長らく療養中だった父が永眠した。急遽帰省し、水曜日に葬儀。そのあと、お寺や役所関係などの事後処理に忙殺され、とうに読みおえていた本書のレビューがなかなか書けなかった。昨年のニューヨーク・タイムズ紙選最優秀作品のひとつである。なんだか印象がぼけてしまったが、とりあえず松山のネットカフェでこれを打ちこんでいる。今夕、横浜に帰ってからチェックすることにしよう。

[☆☆☆★] 1980年代のニューヨークとヴァージニア州の田舎町を舞台に、ドラッグやハードロック、暴力、セックス、ゲイなどが盛りこまれたアングラ色のつよい青春小説。衝動的な高校生たちの行動が活写されるうち、複雑な家庭環境におかれた孤独な人物群像が浮かびあがる。やがてひとりの少年が麻薬中毒で死亡、少女が妊娠するなど突発的な事件が相次ぎ、恋に友情、傷心、後悔、自責の念と青春の心の嵐がなんども襲来。お決まりの展開だが、とにかく彼らはマリファナを吸いまくり、エレキギターをガンガン鳴らし、ボカスカ殴りあう。しかしけっして悪人ではなく、あのころはみんな大いにハメをはずしたものだ、というノスタルジックな回想が示すとおり、狂乱の青春を謳歌した悩み多き「聖者たち」だったのだ。さりとてもちろんホンモノの聖者でもなく、彼らの姿に共感ないし感動をおぼえるか否かは、どうやら読者自身の類似体験の有無にかかっていそうだ。