ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Eleanor Brown の “The Weird Sisters” (1)

 諸般の事情ですっかりブログをサボってしまったが、ようやく Eleanor Brown の "The Weird Sisters" を読みおえた。もっか、ニューヨーク・タイムズ紙の Trade Paperback 部門ベストセラー第19位である。さっそくレビューを書いておこう。

Weird Sisters

Weird Sisters

The Weird Sisters

The Weird Sisters

[☆☆☆★★] ロザリンド、ビアンカコーディーリア――シェイクスピア劇の登場人物とおなじ名前の3姉妹が織りなすにぎやかな悲喜劇。主な舞台はオハイオ州の田舎町で、久しぶりに3人そろって実家に帰ってくる。乳ガンをわずらった母親のことも心配だが、じつはそれぞれ自分の悩みをかかえている。その悩みがよくもわるくも日常茶飯事で現代的だ。仕事か結婚か。借金地獄と不倫の泥沼から抜け出し、いかに自分を見いだすか。行きずりの男と関係して妊娠、子どもを産むべきかどうか。ありきたりだが本人たちには深刻な問題が、姉妹同士や父親との衝突と、それぞれ孤独な煩悶から浮かびあがってくる。エゴとエゴのかしましいぶつかり合いが陽気で楽しく、しかもそこに深い愛情が流れていてハートウォーミング。3姉妹が他人の善意にふれ、次第にトラウマから立ち直るようすはヒーリング小説の常道である。活発なやりとりと静かな内省の配合が巧妙で、しばしば引用されるシェイクスピア劇のせりふも話の流れにアクセントを生んでいるが、このすぐれた小説技術によって支えられているのは結局、ごく平均的な現代のホームドラマにすぎない。英語はテンポのいい文体で流れに乗ると読みやすいが、語彙的にはややむずかしい。