ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“In One Person” 雑感 (1)

 父の四十九日の法要その他で帰省中、John Irving の新作 "In One Person" をボチボチ読んでいた。ほんとうは重いハードカバーを持って帰りたくなかったのだが、なにしろストーリー・テラーの Irving のこと、一気にクイクイ読めるのでは、とひそかに考えていた。
 当てはずれ。寺のほかにお役所参りでけっこう忙しく、なかなか読書に時間を割けなかったのがおもな理由だが、この "In One Person"、少しずつ読みつづけた点を差し引いても、期待したほどにはクイクイ度が高くないような気がする。
 テーマはアイデンティティの追求…かもしれない。が、まだ序盤なので勘の鈍いぼくにはよくわからない。70歳近い老作家が1960年代初め、全寮制の男子校の生徒だった時代をふりかえるのが滑りだし。先へ飛んだり、また少年時代に戻ったりするうちに、この主人公 William がバイセクシュアルであることが明らかになる。その性的妄想あるいは体験の相手が男女とりまぜ次々に登場する。
 例によってドタバタ調のコミカルなエピソードもあってまずまず楽しいが、John Irving といえば、途中は何が言いたいんだかさっぱりわからないけれど、とにかくむっちゃくちゃオモロー!(もう古い)という印象がぼくには強い。レビューも書いたのに中身はすっかり忘れたが、前作 "Last Night in Twisted River" もたしかそうだった。ところが、この "In One Person" は今のところ、「まずまず楽しい」程度にとどまっている。
 まあでも、これはゲイの話が出てくると思わず引いてしまうせいかもしれない。さてどうなりますか。