ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Light between Oceans” 雑感

 オーストラリアの新人女流作家 M. L. Stedman のデビュー作、"The Light between Oceans" を読んでいる。これは4月の初め、ネットサーフィンをしているうちにたまたま見つけ、内容紹介を少し読んで即注文した本だ。東映映画のオープニングを思わせる、波が岩に押し寄せる光景のカバー写真にひと目ぼれ。またまた「見てくれ買い」である。ほかにもいろいろ読みたい本があったので、今までつい後回しになっていたが(昔からの積ん読本は無視)、今年のブッカー賞「ロングリスト候補作」かも、という情報をキャッチして取りかかった。
 これはまず、舞台が抜群にいい。オーストラリア南西部のはるか沖、インド洋と南極海の境目に位置するヤヌス島。こう書いただけでたぶん、目の前に絶海の孤島の風景が浮かんでくることだろう。蛇足だが、島と海の描写を読むと、「息をのむような絶景」という陳腐な形容がぴったりです。
 そこに灯台守の若い夫婦が住んでいる。ほかに住民はいない。これまた、こう書いただけで、何やら一定の物語が思いうかんできそうではないか。本書はその予想どおりの作品である。ぼくは瞬間、網走の能取岬灯台を思い出し、作者の Stedman 女史もきっと、あんな光景を目にして本書の執筆を思い立ったんだろうな、と勝手に想像してしまった。
 時は1926年、まだ第一次大戦の記憶が生々しいころ。二度も流産し、今また死産したばかりで悲しみに暮れる妻の耳に、元気のいい赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。海岸にボートが打ち上げられ、そこに何と赤ん坊が…。
 気をもたせるようだが、今から一杯やることにしているので今日はおしまい。