ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“A Vintage Affair” 雑感 (2)

 これ、相変わらずとても快調で通勤にはもってこいです。どちらかと言えば女性向きだけど、男のぼくでも大いに楽しんでいる。こういう楽しい本を読んでいると、なんだか人生そのものさえ、ちょっぴり楽しく思えてくる。その意味でもこれは「元気が出る小説」ですな。…こう書いたところでふと、モーツァルトのフルート四重奏曲を久しぶりに聴きたくなりBGMで流すことに。
 プロローグは主人公 Phoebe の小学校時代の話で、転校生の Emma と仲よくなり、一緒に遊んでいるうちにある事件が起きる。じつはこれが本編の大事件の伏線となっているので詳しくは書けないが、うまい滑り出しです。ぐっと作品の世界に引きこまれてしまう。
 本編がはじまると Phoebe は30代前半で、かの有名な競売会社サザビーを退職し、ロンドン市内で年代物の高級衣料品専門のリサイクル・ショップを開店したばかり。その客とのやりとりをはじめ、この小説は会話がとても気がきいていて活発で、読んでいるだけで気分が明るくなる。ブランド品の話にしても、実際にはまったく関心のないぼくでさえ、そのすばらしさがよくわかる。買い物をすると幸せになる、という話を思い出しました。
 Phoebe はけっこうモテモテで、店の取材に訪れた地元ミニコミ紙の青年記者や、競売相手の年上の男性がデートを申しこんでくる。彼らとの会話もしゃれていて愉快このうえない。が一方、ここにはなんとホロコーストなど悲痛な話も出てくる。上の簡単な説明から思いうかぶ情景とは好対照で、その明暗の使いわけに感心する。…モーツァルトが終わったので今日はこのへんで。