ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Rachel Joyce の “The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry” (1)

 今年のブッカー賞候補作、Rachel Joyce の "The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry" を読了。さっそくレビューを書いておこう。

The Unlikely Pilgrimage Of Harold Fry

The Unlikely Pilgrimage Of Harold Fry

The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry: A Novel

The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry: A Novel

[☆☆☆★] 喪失と断絶、そして和解がテーマのロード・ノヴェル。イギリス南部の町に住む老人フライのもとに、遠い昔親交のあった女性から手紙が届く。ガンを患い、北部の町のホスピスに入院しているという。フライは衝動的に、歩いて見舞いに行こうと決心、500マイル以上に及ぶ旅に出る。自分が歩きつづけるかぎり女は生きている、と信じるフライ。〈感動的な奇跡の物語〉と言いたいところだが、その後の展開も結末もおおむね予想がつき、「奇跡」とは思えない。道々フライが人生をふりかえるのも定番で、心優しかった女性、今やすっかり疎遠な妻と息子など各人物の性格も類型的。お涙頂戴式とまでは言わないにしても感傷的で甘ったるい描写が多く、かつ同じような説明のくりかえしに退屈してしまう。求道者のごとく歩きつづけるフライに共感し、大勢の人びとが巡礼に参加するくだりなど、型どおりの展開に変化をつけたかったものとしか思えない。ただ定番ながら、ちょっとした心のふれあいに見るべきものがあり、胸を打たれる言葉や場面もある。重箱の隅をつつかないほうが楽しめるだろう。難語も散見されるが総じて読みやすい英語である。