ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Alison Moore の “The Lighthouse” (2)

 "Narcopolis" の落ち穂拾いもしなければならないが、昨日読んだ "The Lighthouse" のほうがぼくにはずっと楽しかったので、まずそちらから。
 じつはこれ、点数評価をさんざん迷った作品である。ゆうべはいったん、☆☆☆★★★に落ちついたのだが、一夜明けてじっくり考えなおした結果、第1インスピレーションを優先させ、☆☆☆☆を最終評価とすることにした。甘いねえ、という声も聞こえてきそうだが、もう迷うのはやめました。
 点数の訂正と同時に、レビューの内容についても若干、加筆修正をほどこした。こんなカッコわるいことは、去年の夏、星印で点数をつけるようになってから初めてだ。あ、一度だけ点数を変え、レビューも一度だけ書きくわえたことがある。ともあれ、評価の基準は、故・双葉十三郎氏の『西洋シネマ体系 ぼくの採点表』に準じているつもりだが、絶対に評価がブレなかったフタバ氏にくらべ、お恥ずかしいかぎりです。
 さて、William Hill のオッズを調べると、"The Lighthouse" は12/1で12作中、第7位。下馬評はあまり高くないようだが、アマゾンUKの Literary Fiction 部門ではベストセラー35位と健闘している。ぼく自身も、今まで読んだ今年のブッカー賞候補作5冊の中ではいちばん上出来だと思う。
 タイトルから察して、去る6月に読んだ M. L. Stedman の "The Light between Oceans" と同じような話かなと思ったが(ちなみに同書は、米アマゾンで8月の推薦図書に選ばれている)、実際は海とはほとんど関係ない。主人公の男が少年時代、コーンウォールの岬で目にした灯台も回想シーンに出てくるものの、全体を通じて重要な役割を果たしているのは、灯台の形をした香水瓶のほうである。
 「胸を打たれる感動的な物語というほどではない」のでショートリストには残らないかもしれない。だが、終幕のサスペンスは心臓バクバクものだし、「小道具の使い方がじつにうまい」。その典型例が香水の瓶であり、それが「少年の心をうしなわない男の人生を……象徴している」点にいたく感心した。ムダに年を食うだけで、いつまでたっても大人になりきれないぼくとしては、いろいろ考えることもありました。