ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Deborah Levy の “Swimming Home” (2)

 帰省2日目。今日はまず、ふるさと宇和島の宣伝から。宇和島に行く機会があったらぜひ鯛めしを食べてください。絶品です! ぼくの同僚でも何人かは知っていた。東京だと渋谷で食べられるのでは。ゆうべは駅前の<かどや>に行ったが、ぼくはここがいちばんお気に入り。家族の意見でも<とみや>、<ほづみ亭>より口に合うそうだ。先日、日テレの「遠くへ行きたい」に出てきた<丸水>ではまだ食べたことがないが、今回はちょっと行けそうにない。
 閑話休題。"Swimming Home" はレビューに書いたとおり、「開幕早々……派手なシーンが続出して幻惑される」作品だ。今月はたまたま『泥棒成金』を久しぶりに観たのだが、フレンチ・リヴィエラの山道や別荘、ニースの海岸など、映画とまったく同じ舞台だろう。Hotel Negresco というのも実在のホテルらしい。そんな「観光地にふさわしく、いろいろなテーマで撮影された完璧なショットの連続」が本書である。
 中でも、冒頭のドライブとプールの場面はかなり強烈で、しかもじつは、そこにトリックが仕掛けられていたことがあとでわかる。何だ、わかりきったミエミエの話じゃん、と思っていると、ええっ、そうだったのか、というやつで、再読すればするほど構成の巧みさに舌を巻くことだろう。ブッカー賞にかぎらず、選考委員は何度か作品を読みなおして評価を決めるはずだから、本書もひょっとしたらショートリストに残るかもしれない。
 だが、たぶん何回読んでも、「真相を知っても……インパクト」は「さほど受けない」のではないだろうか。その理由を詳しく説明するとネタを割ることになるので、ぼくはレビューで、「やがて生と死という古典的なテーマが浮かびあがる」とだけ書いておいた。
 結局、これは「途中のみごとなショットで持っているような作品だ」。田舎に帰ってボケボケ状態の頭でふりかえってみると、『泥棒成金』と同じ舞台の小説ですね、というキャッチフレーズしか思いつかない。