ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“A Month by the Lake & Other Stories” 雑感 (2)

 ひょんなきっかけで読みだした本だが、目次をながめているうちに、長らく積ん読にしておいた理由を思い出した。名作の誉れ高い "Go, Lovely Rose" が収録されていないのだ。ぼくは恥ずかしながら未読で、簡易版なら読めるのだが、どうしても原典で読みたい。いろいろ検索した結果、"Seven by Five" という昔の Penguin Books が相当なページ数なので、これに入っているかも、と思って古本を注文したところだ。
 今日はかみさんと一緒に映画『ボーン・レガシー』を観に行ったりして、昨日からろくに進んでいない。映画のほうは、まずまずといった出来で、期待したほどではなかった。ヒーローと強敵のからみがカーチェイスだけ、という点に不満がのこる。ゆうべ久しぶりに観た『夕陽のガンマン』のほうが、ずっとおもしろかった。クリント・イーストウッドがカッコよすぎますけどね。

 Bates の短編集にもどろう。表題作は、これまた恥ずかしながら初めて読んだが、たぶんおなじみの内容だと思うので、今までほかに気にいった "Elaine" という短編のことを書きたい。主人公の男が、列車の同じ車両に乗りあわせた若い女と視線をかわしつづける話で、女は夫としきりに会話をかわしている。その会話に Elaine がちらっと出てくる。女は夫と Elaine のことがどうも気になるようす。たったそれだけなのに、読みおわってみると、これはたしかに "Elaine" としか名付けようのない短編だ。なんということもない話でありながら、若い夫婦のその時点における心理的な関係がくっきり浮かびあがる。短編小説の名手と謳われた Bates の手腕の片鱗がうかがえる作品です。
 ……以上を書きおわってぼんやり書棚をながめていたら、ありゃ、なんと "Seven by Five" があるではないか! あわてて注文を取り消そうと思ったが、すでに出荷準備中! ガックリきました。