ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jon Kalman Stefansson の “Heaven and Hell” (1)

 アイスランドの作家 Jon Kalman Stefansson の "Heaven and Hell" を読了。原作は2008年刊、英訳初版は2010年刊である。さっそくレビューを書いておこう。(表示はできませんでしたが、ペイパーバックも出ています)。

Heaven and Hell

Heaven and Hell

  • 作者: Jon Kalman Stefansson,Philip Roughton
  • 出版社/メーカー: MacLehose Press
  • 発売日: 2010/09/02
  • メディア: ハードカバー
  • クリック: 2回
  • この商品を含むブログを見る
[☆☆☆★] 19世紀末、4月とはいえまだ冬のアイスランドの海。タラ漁解禁の日に若い漁師が不慮の死をとげ、その友人だった孤独な少年が人生に疑問を覚え、自殺を決意する。が、その小さな漁村では、同じく心に深い傷を負った人びとがひっそり暮らしていた……。いかにも「世界の北の果て」らしい、どこまでも寒く、暗く、静かな舞台が印象的。自然描写の中にふと心理表現がいりまじり、時に散文詩を思わせる文体にいぶし銀のような魅力がある。雪山を望み、暗い海に面したフィヨルドの村にふさわしい人物がパブに集まり、それぞれの悲哀と絶望が複雑微妙にからみあい、少しずつにじみ出てくるところもいい。人生は生きるに値するものなのか、とは古典的な、かつ永遠の疑問であるが、今から百年以上も昔、最北端の酷寒の地に住む人間が発した問いだけに格別の重みがある。もとより完全な答えなどなく、とりあえず生きつづけるしかないのが人生だという結論もふくめ、時代背景と舞台設定の妙によって読みがいのある作品となっている。英語は句読法が独特で原語を反映したものと思われるが、その点を除けばとても読みやすい。