ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jon Kalman Stefansson の “Heaven and Hell” (2)

 この本は、ぼくのアンテナに載せている海外ブログ "Reading Matters" の記事を見かけて知った。レビューそのものは読まなかったが、点数が高かったし、表紙が気にいったので、いわゆるジャケ買い、ぼく流に言うと「見てくれ買い」。ちなみに、M. L. Stedman の "The Light between Oceans" をいち早く紹介していたのもこのブログで、同書もぼくは見てくれ買いだった。いま検索すると、相変わらずニューヨーク・タイムズ紙調べのベストセラーになっている。
 さて、今回の "Heaven and Hell" だが、これはひとことで言えば、「時代背景と舞台設定の妙によって読みがいのある作品」ですな。なにしろ、「人生は生きるに値するものなのか、とは古典的な、かつ永遠の疑問」であって、これをテーマにした小説はいくらでもありそうだ。友だちが死んだことにショックを受け、この疑問に駆られるというのも月並みな話で、現代の日常生活を題材としたものなら、よほど工夫しないかぎり、おもしろくもなんともないだろう。舞台が19世紀末のアイスランドの小さな漁村だからこそ、「格別の重み」があり「読みがいのある作品となっている」のである。
 しみじみとした味わいの文体も舞台にふさわしいものだし、各人物の「悲哀と絶望が……少しずつにじみ出てくるところも」、「暗い海に面したフィヨルドの村」ならではという気がする。ぼくはふと、斎藤耕一監督の『津軽じょんがら節』を思い出してしまった。

津軽じょんがら節 [DVD]

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 テーマと筋立てに絞って考えると、ぼくはあまり高い評価はできないけれど、上に述べたような「付加価値」という点では見るべきものがある。レビューは読まなかったが、"Reading Matters" のブログ主、Kim Forrester さんは、そんな付加価値を重視されているのかもしれない。