この本は、ぼくのアンテナに載せている海外ブログ "Reading Matters" の記事を見かけて知った。レビューそのものは読まなかったが、点数が高かったし、表紙が気にいったので、いわゆるジャケ買い、ぼく流に言うと「見てくれ買い」。ちなみに、M. L. Stedman の "The Light between Oceans" をいち早く紹介していたのもこのブログで、同書もぼくは見てくれ買いだった。いま検索すると、相変わらずニューヨーク・タイムズ紙調べのベストセラーになっている。
さて、今回の "Heaven and Hell" だが、これはひとことで言えば、「時代背景と舞台設定の妙によって読みがいのある作品」ですな。なにしろ、「人生は生きるに値するものなのか、とは古典的な、かつ永遠の疑問」であって、これをテーマにした小説はいくらでもありそうだ。友だちが死んだことにショックを受け、この疑問に駆られるというのも月並みな話で、現代の日常生活を題材としたものなら、よほど工夫しないかぎり、おもしろくもなんともないだろう。舞台が19世紀末のアイスランドの小さな漁村だからこそ、「格別の重み」があり「読みがいのある作品となっている」のである。
しみじみとした味わいの文体も舞台にふさわしいものだし、各人物の「悲哀と絶望が……少しずつにじみ出てくるところも」、「暗い海に面したフィヨルドの村」ならではという気がする。ぼくはふと、斎藤耕一監督の『津軽じょんがら節』を思い出してしまった。
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