ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“A Woman in Jerusalem” 雑感

 ずいぶんブログをサボってしまった。風邪でダウンしたところへ今年最後の繁忙期の第一波。毎日もうヘトヘトで、電車やバスの中でもついウトウト。
 おかげで、本を読むのもすっかりカタツムリくんだったが、きょうはなんとか、A. B. Yehoshua の "A Woman in Jerusalem" について雑感を書けるところまで漕ぎつけた。2006年のロサンジェルス・タイムズ紙図書賞(Los Angeles Times Book Prize)の小説部門受賞作で、Yehoshua はイスラエルの作家。ヘブライ語からの英訳である。
 ほんとうは今年の同賞受賞作、Alex Shakar の "Luminarium" を読みたかったのだが、なにしろ分厚い本で、すぐには片づきそうもない。ちょっぴりかじっただけで急遽、もっと薄い本書に乗りかえた。で、英語も簡単だし、さくさく読めるだろうとタカをくくっていたら、なんのことはない、上の事情でこちらもさっぱり進まなかった。
 そのせいか、いまのところ、どうもピンとこない。舞台は題名どおりエルサレム。爆弾テロ事件の犠牲になった女性が身元不明のまま、病院のモルグに安置される。やがて給料明細から大手の製パン会社の従業員らしいとわかるが、会社のほうでは、欠勤しているはずの彼女の安否を確かめた形跡がない。それを「非人道的な行為」だと義憤に駆られたジャーナリストが週刊誌に告発記事を寄稿。発売前のゲラを読んだ製パン会社の社長が人事部長を呼びつけ、ことの真相を調べるように命じる。
 やがて問題の女性が夜勤の清掃員で、ロシアからの移民だったことがわかり、人事部長が夜勤担当の管理職やジャーナリスト、病院関係者、女性の隣人などから事情を聞くうちに、その薄倖の人生と孤独な人間像が次第に浮かびあがる。
 ……ざっとそんな粗筋だが、ささいな問題でジャーナリストが騒ぎたてているとしか思えず、会社側の動きも過剰反応気味。「なんでオレがこんなことで振り回されるのか」とぼやく人事部長の気持ちがよくわかる。要するに、どうも小粒の話らしいのがイマイチ乗れない理由だ。とはいえ、冒頭の一節が思わせぶりなので、この先、意外な事実が掘り起こされるのを期待するしかない。さて、どうなるんでしょうか。