ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Ismail Kadare の “The Ghost Rider” (1)

 諸般の事情で長らく読書もブログもサボっていたが、きょう改めて Ismail Kadare の "The Ghost Rider" に取り組み、なんとか読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。

The Ghost Rider

The Ghost Rider

  • 作者: Ismail Kadare,Jon Rothschild,David Bellos
  • 出版社/メーカー: Canongate Books
  • 発売日: 2010/05/20
  • メディア: ペーパーバック
  • クリック: 1回
  • この商品を含むブログを見る
[☆☆☆★★] 中世アルバニアの小さな村で奇怪な事件が起きた。遠国に嫁いでいた名家の娘を、なんと3年前に死んだはずの兄が母のもとに連れ帰ったというのだ。亡霊の仕業か、世間をあざむく狂言か、はたまた何か深い秘密が隠されているのか。警察署長が捜査に乗りだすが、「兄」は行方不明、娘も母もやがて死亡、事件は混迷の度を深める。いかにも寓話らしい設定だが、当初はその意味が判然とせず、ミステリアスな雰囲気のうちに物語が進む。やがて〈死者の復活〉がキリスト教の根幹にかかわり、国家の安全基盤をゆるがす大問題へと発展したあたりから寓話の意味も鮮明になる。つまりこれは、発表当時、東西対立のはざまに置かれ、ホッジャ体制のもとで鎖国状態にあった共産主義国アルバニアの政情を諷刺した作品である。明らかに体制批判と受け取れる箇所は意外に少ないが、鎖国をやめ、共産主義という無神論から脱却し、不信に満ちた社会を改革しようと国民に訴えるところに作者の意図があったのではないかと思われる。フランス語からの英訳ということで、英語はごく標準的で読みやすい。